詩篇107篇

第五巻

■敵からの贖い

107:1 「主に感謝せよ。主はまことにいつくしみ深い。その恵みはとこしえまで。」

 主に感謝するように呼びかけられています。その理由が二つ示されています。訳出されていませんが、理由を示す接続詞が、原語には記されています。

 それは、主が良い方であるからです。良いの意味は、主の目に適っていることを表していて、主の目に適ったことをされる方であるからです。

 そして、恵みは、「契約に対する忠誠」を表し、主が契約を忠誠をもって果たされることを表しています。「主」は、存在者を意味しますが、それと共に、モーセに証しされたように、主という御名は、契約の履行者を表します。主が契約を果たすことは、永遠までも続くことです。

・「いつくしみ深い」→良い。目にかなっている。美しい。

・「恵み」→契約に対する忠誠。

107:2 主に贖われた者はそう言え。主は彼らを敵の手から贖い

107:3 国々から彼らを集められた。東からも西からも北からも南からも。

 主に贖われた者は、主が契約を果たされたことを経験したのですから、冒頭のように賛美せよと促されています。どのようなところから贖われたかが示されています。贖いは、救い出されたという意味です。

・敵の手からの贖い。

 まず、彼らは、敵の手にあった者です。敵から解放しました。

 これは、悪魔からの解放です。その支配にあったのです。これは、信仰者の初めで、敵の手である悪魔から解放されたのです。それは、主に対する信仰によります。

・国々から集められた。

 彼らは、国々にいた者たちです。遠く離れた者たちです。

 散らされたイスラエルと共に、異邦人についても、主を呼び求めることで、主の民として集められることも預言として示されています。

■飢え渇きからの救い

107:4 彼らは荒野や荒れ地をさまよい人が住む町への道を見出せなかった。

107:5 飢えと渇きによって彼らのたましいは衰え果てた。

・荒野や荒地で、さまよい、人の住む町への道を見出せない者。

 そのような彼らは、荒野や荒地でさまよう者たちです。飢えと渇きの場所です。それは、たましいの飢えと渇きを比喩として表しています。荒野と荒れ地というたましいにとって飢えと渇きの地に対比して、人の住む町は、飢えと渇きの満たされるところです。

107:6 この苦しみのときに彼らが主に向かって叫ぶと主は彼らを苦悩から救い出された。

107:7 彼らをまっすぐな道に導き人が住む町へ向かわせた。

 このような時、彼らは、主に叫びました。主は、救い出されたのです。主の方法は、彼らをまっすぐな道に導かれたことです。これは、比喩です。彼のたましいにとってまっすぐな道です。そのようなたましいの歩みが、その人の飢えと渇きを満たす方法であることが示されています。本当の満たしは、主の道に真っ直ぐに従うところにあります。

107:8 主に感謝せよ。その恵みのゆえに。人の子らへの奇しいみわざのゆえに。

 このようにされることは、人の子にとって感謝です。それは、主が契約を徹底的に果たされて御業をなすからです。主に向かって叫ぶ者に応えるというのが主の契約です。

107:9 まことに主は渇いたたましいを満ち足らせ飢えたたましいを良いもので満たされた。

 たましいを満たすものは、主が良いとしたもので、主の目に適ったものです。人の肉を満たすことではありません。

 主は、渇いたたましいを満ち足らせます。そして、飢えた者を良いもので満たされます。この良いものは、霊的な祝福です。

・「良いもの」→良い。いつくしみ深いと訳されている語と同じ語。

■闇と死の影に座す者の救い

107:10 闇と死の陰に座す者苦しみの鉄のかせに縛られている者

107:11 彼らは神のことばに逆らいいと高き方のさとしを退けた。

107:12 それで主は苦役によって彼らの心を低くされた。彼らはよろけたがだれも助けなかった。

 闇は、光がないことを表しています。光は、十一節の神の言葉を表しています。神の言葉を受け入れ、その御心を行うことで命があることすなわち神と共に歩み永遠の栄光が与えられることが光です。この光は、人の命です。

 死の陰は、深い陰のことで、これも、光が照らされているのに、それが遮られた陰にいることを表していて、さとしを退けたことを表しています。闇よりは、ましですが、神の言葉を退けたことを表しています。

 そして、鉄の枷の中で低くされている者は、十二節に記されているように、主が苦役によって彼らの心を低くされたことを指しています。彼らは、よろけたのです。しかし、誰も助けないのです。神の言葉を退けて堅く立つことはできません。

・「闇」→光のない状態。

・「死の陰」→深い陰。日が遮られてできる深い陰。

・「苦しみ」→低くなっていること。貧しい、謙遜、ここでは、十二節の言葉から、「苦役によって彼らの心を低くされた。」こと。

107:13 この苦しみのときに彼らが主に向かって叫ぶと主は彼らを苦悩から救われた。

107:14 主は彼らを闇と死の陰から導き出し彼らのかせを打ち砕かれた。

107:15 主に感謝せよ。その恵みのゆえに。人の子らへの奇しいみわざのゆえに。

107:16 まことに主は青銅の扉を打ち砕き鉄のかんぬきをへし折られた。

 そのように神の言葉を受け入れず、従わない者でも、彼らが主に向かって叫ぶと、主は、彼らを救い出されました。光としての神の言葉がない状態から導き出されました。彼からが御言葉に従うように導かれたのです。これは、神様が契約を果たされたことによります。彼らは、主によって心低くされたのです。彼らが主を叫び求めたことは、彼らが今までの生き方をやめ、主に立ち返ったことを表します。そのような者に応えるのが契約です。

 彼らを閉じ込めていたのは、青銅の扉、鉄の環抜きです。非常に強い物です。それは、人の欲です。悪魔が閉じ込めているので私のせいではないとは言えないのです。しかし、主は、そのような物を打ち砕きへし折られました。

■背きと咎のために自分を蔑む者の救い

107:17 愚か者は自分の背きの道のためまた咎のために苦しみを受けた。

 愚か者は、背きの道のゆえに、また、咎のゆえに、自分を蔑みました。

・「苦しみを受けた」→蔑む、脅す。自分を蔑む、謙る。苦しむ。

107:18 あらゆる食物を彼らの喉は受けつけずついに死の門に至った。

 彼らのたましいは、あらゆる食物を憎みました。彼にとって命である食物を憎んだのです。これは、たましいの食物のことです。彼は、自分を蔑み、苦しんだのですが、そのために、すぐに神の言葉に立ち返るのでなく、また、神と共に歩むのでなく、自分を蔑むことに止まっていたのです。しかし、そこに命はありませんでした。

・「彼らの喉」→彼らのたましい。

107:19 この苦しみのときに彼らが主に向かって叫ぶと主は彼らを苦悩から救われた。

 その時、彼は、主に叫んだのです。

107:20 主はみことばを送って彼らを癒やし滅びの穴から彼らを助け出された。

 主は、彼に御言葉を送りました。彼は、その言葉によって癒されたのです。そして、彼が御言葉のうちを生きるようにされました。滅びから救われて、生きた者としての歩みを始めたのです。実を結ぶようになったのです。この滅びは、地獄に落ちることではありません。

107:21 主に感謝せよ。その恵みのゆえに。人の子らへの奇しいみわざのゆえに。

107:22 感謝のいけにえを献げ喜び叫びながら主のみわざを語れ。

 主は、そのようにして御業をなし、契約を果たされるのです。彼らは、感謝するのです。感謝の生贄を捧げ、喜び叫ぶのです。そして、主の御業を語ります。

■船に乗って海に出る者 知恵を失う

107:23 船に乗って海に出る者大海で商いする者

107:24 彼らは見た。主のみわざを深い海でその奇しいみわざを。

107:25 主が命じて激しい暴風を起こされると風が波を高くした。

107:26 彼らは天に上り深みに下りそのたましいはみじめにも溶け去った。

 情景は、海で嵐にあったことですが、二十六節に「たましい」と記されていることから、霊的な試みのことです。この暴風は、主が命じたことです。彼らは、繰り返す波に揉まれて、彼らのたましいは主の言葉に従う分別を失いました。次節には、「知恵」が呑み込まれたとあります。

107:27 彼らは酔った人のようによろめき知恵はことごとく呑み込まれた。

 彼らは、酔った人のようになりました。試みの中でまっすぐ歩めないのです。それは、知恵が呑み込まれたからです。知恵は、たましいが御言葉に従う分別です。それを無くしたので、試みの中で真っ直ぐに歩めなくなりました。

107:28 この苦しみのときに彼らが主に向かって叫ぶと主は彼らを苦悩から導き出された。

107:29 主が嵐を鎮められると波は穏やかになった。

107:30 波が凪いだので彼らは喜んだ。主は彼らをその望む港に導かれた。

 主に向かって彼らが叫んだ時、主は嵐を鎮められました。彼らが望む港に導かれました。その目的を果たさせるのです。望む港は、彼らが真っ直ぐに歩んで到達できるところを表しています。

107:31 主に感謝せよ。その恵みのゆえに。人の子らへの奇しいみわざのゆえに。

107:32 民の集会で主をあがめ長老たちの座で主を賛美せよ。

 この人は、長老です。民の集会で主を賛美するのです。深い霊的経験を経た長老は、このように主が契約を果たされることを経験してきたのです。それで、主を賛美するのです。それは、集会全体の霊的成長になります。

■そこに住む者たちの悪のゆえに

107:33 主は豊かな川を荒野に水の湧き上がる所を潤いのない地に

「水の湧き上がるところ」→水。

107:34 肥沃な地を不毛の土地に変えられる。そこに住む者たちの悪のゆえに。

 そこに住む者たちは、豊かな川、水の祝福を経験した者たちであるのです。しかし、主は、それを取り上げられます。不毛の地とされ、実を結ぶことがないようにされます。

107:35 主は荒野を水のある沢に砂漠の地を水の湧き上がる所に変え

「沢」→湿地帯。

「水の湧き上がるところ」→水。

107:36 そこに飢えた者を住まわせる。彼らは人が住む町を堅く立て

107:37 畑に種を蒔きぶどう畑を作り豊かな実りを得る。

 その一方で、正しい者たちについては、荒野を水のある湿地帯とします。また、乾いた土地を水にします。水は、御言葉の比喩です。

 飢えた人を住ませます。人が住む町は、飢えた物を満たすことを表しています。

 さらに、彼らは、豊かな実りを得ます。実を結ぶことの比喩です。

107:38 主が祝福されると彼らは大いに増え主はその家畜を減らされない。

 そして、主は祝福されます。

■しいたげ

107:39 虐げとわざわいと悲しみにより彼らは減ってうなだれる。

 虐げと災いと悲しみによって彼らは減り、うなだれます。

107:40 主は君主たちを低くし道なき荒れ地をさまよわせる。

 それをする君主に蔑みを注がれます。彼らは、荒地をさまよわされます。

107:41 しかし貧しい者を困窮から高く上げその一族を羊の群れのようにそこに置かれる。

 主を求める者を、謙ったところから、高く上げます。そして、一族を羊の群れのようにされます。これは、彼らが減ることと対比されています。

 三十九節では、経済的な貧しさということについては、特に触れられていません。

・「貧しい」→主を求める者。

・「困窮」→謙り。

107:42 直ぐな人はそれを見て喜び不正な者はみな口をつぐむ。

 そのような主の取り扱いを見て、直ぐな人は喜びます。不正な者は、口をつぐみます。

107:43 知恵のある者はだれか。これらのことに心を留めよ。主の数々の恵みを見極めよ。

 知恵のある者とは、御言葉に従う分別を持つ人のことです。その人は、主が契約を忠誠を持って果たされることを心にとめよと言いました。それを見極めるのです。そうすれば、自ずと、主の言葉に従うことを求めるはずです。