創世記17章
17:1 さて、アブラムが九十九歳のとき、主はアブラムに現れ、こう言われた。「わたしは全能の神である。あなたはわたしの前に歩み、全き者であれ。
17:2 わたしは、わたしの契約を、わたしとあなたとの間に立てる。わたしは、あなたを大いに増やす。」
まず、「わたしの前を歩み、全き者であれ」と仰せられましたが、これは、これから結ぶ契約のためで、一方の当事者の履行義務であるのです。
契約は、アブラムを大いに増やすことです。
主は、アブラムに対して、ご自分の御名を「全能の神」と告げられました。その御名は、契約の保証となります。契約が示していることは、将来のことであり、永遠の契約です。それを実現される方は、全能でなければならないのです。ちなみに、契約を果たす方としては「主」という御名で宣言されます。
出エジプト記
6:2 神はモーセに語り、彼に仰せられた。「わたしは主である。
6:3 わたしは、アブラハム、イサク、ヤコブに全能の神として現れたが、主という名では、彼らにわたしを知らせなかった。
6:4 わたしはまた、カナンの地、彼らがとどまった寄留の地を彼らに与えるという契約を彼らと立てた。
6:5 今わたしは、エジプトが奴隷として仕えさせているイスラエルの子らの嘆きを聞き、わたしの契約を思い起こした。
6:6 それゆえ、イスラエルの子らに言え。『わたしは主である。わたしはあなたがたをエジプトの苦役から導き出す。あなたがたを重い労働から救い出し、伸ばされた腕と大いなるさばきによって贖う。
6:7 わたしはあなたがたを取ってわたしの民とし、わたしはあなたがたの神となる。あなたがたは、わたしがあなたがたの神、主であり、あなたがたをエジプトでの苦役から導き出す者であることを知る。
--
主という名は、存在者を表しますが、ここでは、契約を果たす方としその御名を告げています。
17:3 アブラムはひれ伏した。神は彼にこう告げられた。
彼がひれ伏したのは、主の仰せを恐れ多いものと考えたからです。彼と契約を立て、彼を大いに増やすことを約束されたからです。しかも、全能の神としてそれを保証されたのです。その尊さを覚えて崇めました。
17:4 「これが、あなたと結ぶわたしの契約である。あなたは多くの国民の父となる。
契約について詳細に示されました。アブラムを大いに増やすと最初に言われましたが、その多さについて、彼が多くの国民の父となるほどです。
17:5 あなたの名は、もはや、アブラムとは呼ばれない。あなたの名はアブラハムとなる。わたしがあなたを多くの国民の父とするからである。
彼の名については、アブラム(高貴な父)から、アブラハム(多くの者の父)となると言われました。契約の内容に沿ったものです。
17:6 わたしは、あなたをますます子孫に富ませ、あなたをいくつもの国民とする。王たちが、あなたから出てくるだろう。
そして、彼の子孫をますます増やし、その子孫は、多くの国民をなし、王たちが出てきます。
17:7 わたしは、わたしの契約を、わたしとあなたとの間に、またあなたの後の子孫との間に、代々にわたる永遠の契約として立てる。わたしは、あなたの神、あなたの後の子孫の神となる。
その契約は、アブラハムにとどまらず、後の子孫に対して永遠の契約として結びます。それは、後の子孫の神となるためです。
17:8 わたしは、あなたの寄留の地、カナンの全土を、あなたとあなたの後の子孫に永遠の所有として与える。わたしは彼らの神となる。」
そして、カナンの全土を彼と彼の子孫に与えます。それは、主が彼らの神となるためです。
17:9 また神はアブラハムに仰せられた。「あなたは、わたしの契約を守らなければならない。あなたも、あなたの後の子孫も、代々にわたって。
主は、契約を守らなければならないと告げました。代々守るべきものです。
17:10 次のことが、わたしとあなたがたとの間で、またあなたの後の子孫との間で、あなたがたが守るべきわたしの契約である。あなたがたの中の男子はみな、割礼を受けなさい。
守るべき契約は、割礼です。
17:11 あなたがたは自分の包皮の肉を切り捨てなさい。それが、わたしとあなたがたとの間の契約のしるしとなる。
割礼は、包皮の肉を切り捨てることです。但し、これは、契約のしるしです。契約を守る者して、かたちとして割礼を受けるのです。契約の履行義務は、全き者であることです。そのしるしが割礼です。
割礼は、しるしとして比喩となっています。それは、肉を捨てることを表しています。肉には従わず神の御心を行うことの比喩です。それが全き者ということです。
17:12 あなたがたの中の男子はみな、代々にわたり、生まれて八日目に割礼を受けなければならない。家で生まれたしもべも、異国人から金で買い取られた、あなたの子孫ではない者もそうである。
割礼を受けるのは、彼らに属するすべての者です。
17:13 あなたの家で生まれたしもべも、金で買い取った者も、必ず割礼を受けなければならない。わたしの契約は、永遠の契約として、あなたがたの肉に記されなければならない。
それは、永遠の契約です。その契約のしるしを肉に刻むのです。
17:14 包皮の肉を切り捨てられていない無割礼の男、そのような者は、自分の民から断ち切られなければならない。わたしの契約を破ったからである。」
割礼を受けない男は、民とは認められません。断ち切ることは、殺すことです。契約を破ったからです。
これは、霊的な比喩になっていて、肉を捨てないならば、死であるということです。神の前に死んだものであり、実を結ばす、報いがないのです。
17:15 また神はアブラハムに仰せられた。「あなたの妻サライは、その名をサライと呼んではならない。その名はサラとなるからだ。
17:16 わたしは彼女を祝福し、彼女によって必ずあなたに男の子を与える。わたしは彼女を祝福する。彼女は国々の母となり、もろもろの民の王たちが彼女から出てくる。」
「サライ」は、集団の中で先頭に立つ人のことで、「サラ」は、同じ語からの派生ですので意味は同じです。彼女が国々の母となるからです。
17:17 アブラハムはひれ伏して、笑った。そして心の中で言った。「百歳の者に子が生まれるだろうか。サラにしても、九十歳の女が子を産めるだろうか。」
彼は、ひれ伏しました。これは、主の仰せをそのまま受け入れ、主を崇めたからです。彼は、笑いました。この笑いは、喜びの笑いです。この笑いは、表に現れたのです。ですから、ひれ伏す行為と整合していなければなりません。主の言葉を否定しての笑いではなく、喜びの笑いです。サラが心の中で主の言葉を否定して笑ったのとは異なります。
その一方で、彼は、自分とサラの歳を考え、産めるだろうかと言いました。
17:18 そして、アブラハムは神に言った。「どうか、イシュマエルが御前で生きますように。」
彼が思い当たったのは、サラの奴隷をとおして生まれた子がサラの子としての子孫であると考え、このように申し上げました。
17:19 神は仰せられた。「いや、あなたの妻サラが、あなたに男の子を産むのだ。あなたはその子をイサクと名づけなさい。わたしは彼と、わたしの契約を立て、それを彼の後の子孫のために永遠の契約とする。
しかし、神は、それを否定し、奴隷の子ではなく、妻のサラの産む男の子がその子孫であり、その者と契約を結ぶことを明確に示しました。その子をイサクと名付けるように言われ、必ず男の子が生まれることを明らかにしました。
17:20 イシュマエルについては、あなたの言うことを聞き入れた。必ず、わたしは彼を祝福し、子孫に富ませ、大いに増やす。彼は十二人の族長たちを生む。わたしは彼を大いなる国民とする。
イシュマエルのことについては、アブラハムの言葉どおりに彼を祝福することを約束し、彼は大いなる国民となることを示されました。
その祝福については、アブラハムの言うことを聞き入れたと言われました。アブラハムの言葉は、神様が意図したことから外れた考えから出てきたものです。しかし、彼がイシュマエルを子と考え、大切なものと考えるから出てきた言葉です。神様は、喜んで聞き入れられました。
17:21 しかし、わたしがわたしの契約を立てるのは、サラが来年の今ごろあなたに産むイサクとの間にである。」
しかし、神様がご自分の契約を立てるのは、イサクとの間です。彼は、サラから来年の今頃生まれることも明らかにされました。
17:22 神はアブラハムと語り終えると、彼のもとから上って行かれた。
17:23 そこでアブラハムは、その子イシュマエル、彼の家で生まれたすべてのしもべ、また、金で買い取ったすべての者、すなわち、アブラハムの家のすべての男子を集め、神が彼に告げられたとおり、その日のうちに、彼らの包皮の肉を切り捨てた。
アブラハムは、すべて彼に属する男子の包皮の肉を切り捨てました。割礼を施したのですが、肉を切り捨てたことが強調されています。
17:24 アブラハムが包皮の肉を切り捨てられたときは、九十九歳であった。
17:25 その子イシュマエルは、包皮の肉に割礼を受けたとき、十三歳であった。
17:26 アブラハムとその子イシュマエルは、その日のうちに割礼を受けた。
17:27 彼の家の男たちはみな、家で生まれた奴隷も、異国人から金で買い取った者も、彼と一緒に割礼を受けた。
男子がみな割礼を受けたことが改めて記されています。