使徒23章

23:1 パウロは、最高法院の人々を見つめて言った。「兄弟たち。私は今日まで、あくまでも健全な良心にしたがって、神の前に生きてきました。」

 パウロは、自分は正しい生き方をしてきたことを証ししました。すなわち、訴えられるべき罪がないことをはじめに語りました。

 良心は、人の持つ教えのことです。その意味は、人の行動を決定する基準であるということです。信者の場合、その教えが聖書の言葉に整合していることは幸いです。肉を食べることに関して、「弱い良心」と記されていますが、聖書の教えに整合されていない良心があるのです。

 健全な良心は、神の言葉に整合した良心のことです。それが彼の持つ教えであり、行動の基準となっていました。

コリント第一

8:7 しかし、すべての人にこの知識があるわけではありません。ある人たちは、今まで偶像になじんできたため、偶像に献げられた肉として食べて、その弱い良心が汚されてしまいます。

8:10 知識のあるあなたが偶像の宮で食事をしているのをだれかが見たら、その人はそれに後押しされて、その良心は弱いのに、偶像の神に献げた肉を食べるようにならないでしょうか。

8:12 あなたがたはこのように兄弟たちに対して罪を犯し、彼らの弱い良心を傷つけるとき、キリストに対して罪を犯しているのです。

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23:2 すると、大祭司アナニアは、パウロのそばに立っていた者たちに、彼の口を打つように命じた。

23:3 そこで、パウロはアナニアに向かって言った。「白く塗った壁よ、神があなたを打たれる。あなたは、律法にしたがって私をさばく座に着いていながら、律法に背いて私を打てと命じるのか。」

 大祭司アナニヤは、パウロの口を打つように命じました。彼の言い分を聞く耳を持たないのです。罪を裁く者が人の言い分を聞かず、さらに、一方的に打つことは、律法に反したことです。彼は、それを指摘しました。律法に基づていて正当な裁判をするように求めたのです。

23:4 すると、そばに立っていた者たちが「あなたは神の大祭司をののしるのか」と言ったので、

23:5 パウロは答えた。「兄弟たち。私は彼が大祭司だとは知らなかった。確かに、『あなたの民の指導者を悪く言ってはならない』と書かれています。」

 それを命じたのが大祭司であることを知り、かれは、聖書の言葉を引用して、自分の非を認めました。

23:6 パウロは、彼らの一部がサドカイ人で、一部がパリサイ人であるのを見てとって、最高法院の中でこう叫んだ。「兄弟たち、私はパリサイ人です。パリサイ人の子です。私は死者の復活という望みのことで、さばきを受けているのです。」

 パウロは、彼らがパウロの言い分を聞くつもりがないことが分かりました。何を弁明しても意味がないのです。それで、最高法院の構成員がサドカイ人とパリサイ人であるのを見て、彼らの教えの違いを突きました。

23:7 パウロがこう言うと、パリサイ人とサドカイ人の間に論争が起こり、最高法院は二つに割れた。

23:8 サドカイ人は復活も御使いも霊もないと言い、パリサイ人はいずれも認めているからである。

 全く信じることが異なる二派は、二つに割れました。

23:9 騒ぎは大きくなった。そして、パリサイ派の律法学者たちが何人か立ち上がって、激しく論じ、「この人には何の悪い点も見られない。もしかしたら、霊か御使いが彼に語りかけたのかもしれない」と言った。

 パリサイ派の律法学者は、パウロをパリサイ人として擁護さえしました。霊も、御使いも否定しているサドカイ人の教えこそ大きな誤りであることをこの機会に強く主張したのです。

23:10 論争がますます激しくなったので、千人隊長は、パウロが彼らに引き裂かれてしまうのではないかと恐れた。それで兵士たちに、降りて行ってパウロを彼らの中から引っ張り出し、兵営に連れて行くように命じた。

 千人隊長は、パウロを兵営に連れて行くように命じました。

23:11 その夜、主がパウロのそばに立って、「勇気を出しなさい。あなたは、エルサレムでわたしのことを証ししたように、ローマでも証しをしなければならない」と言われた。

 主は、信仰によって奮い立つように勧めました。その力は、聖霊によります。世の方法とは異なります。世の人は、勇気を出しなさいと言われても、その根拠を持っていません。主の励ましは、信仰に立つように勧めることです。信仰に応えてことをなすのは、主であり、それによって栄光が現されるためです。

 主は、エルサレムでの証を良いとしてくださいました。同じように、ローマでも証ししなければならないと言われました。

 なお、これは、パウロが恐れたので、励ましたということではありません。もっと大胆に奮い立つように命じたのです。

・「勇気を出す」→揺るぎない勇気を支える内側を力付けられること。それは、信仰に結果として与えられます。この揺るぎない大胆な勇気を示すということは、聖霊によって生み出された内なる確信を実践することです。

23:12 夜が明けると、ユダヤ人たちは徒党を組み、パウロを殺すまでは食べたり飲んだりしない、と呪いをかけて誓った。

23:13 この陰謀を企てた者たちは、四十人以上いた。

 ユダヤ人たちがパウロを殺そうとする決意は相当なものでした。四十人ほどが陰謀に加わりました。パウロがキリストを信じて仕えていることは、それ自体がイエス様がキリストであることの大きな証しになっていました。迫害の急先鋒にあった者が、キリストのために命をかけているのです。パウロがキリストを見、また、キリストに遣わされたことは、いよいよ確かなことになります。そうなると、キリストを十字架につけた罪をユダヤ人は負わなければなりません。

23:14 彼らは祭司長たちや長老たちのところに行って、次のように言った。「私たちは、パウロを殺すまでは何も口にしない、と呪いをかけて堅く誓いました。

23:15 そこで、今あなたがたは、パウロのことをもっと詳しく調べるふりをして、彼をあなたがたのところに連れて来るように、最高法院と組んで千人隊長に願い出てください。私たちのほうでは、彼がこの近くに来る前に殺す手はずを整えています。」

 彼らは、祭司長たちや長老たちを巻き込みました。そして、最高法院まで巻き込むことを提案しています。彼らにとっても、パウロの存在はあってはならないものでした。

23:16 ところが、パウロの姉妹の息子がこの待ち伏せのことを耳にしたので、兵営に来て中に入り、そのことをパウロに知らせた。

23:17 そこで、パウロは百人隊長の一人を呼んで、「この青年を千人隊長のところに連れて行ってください。何か知らせたいことがあるそうです」と言った。

 パウロの姉妹の子がこの計画を聞きつけ、パウロに知らせました。パウロは、彼を千人隊長に送りました。

23:18 百人隊長は彼を千人隊長のもとに連れて行き、「囚人パウロが私を呼んで、この青年をあなたのところに連れて行くように頼みました。何かあなたに話したいことがあるそうです」と言った。

23:19 すると、千人隊長は青年の手を取り、だれもいないところに連れて行って、「私に知らせたいこととは何だ」と尋ねた。

 千人隊長は、彼と二人だけの場所で彼の知らせを尋ねました。

23:20 青年は言った。「ユダヤ人たちは、パウロについてもっと詳しく調べるふりをして、明日パウロを最高法院に連れて来るよう、あなたにお願いすることを申し合わせました。

23:21 どうか、彼らの言うことを信じないでください。彼らのうちの四十人以上の者が、パウロを殺すまでは食べたり飲んだりしないと呪いをかけて誓い、待ち伏せをしています。今、彼らは手はずを整えて、あなたの承諾を待っているのです。」

 青年は、ユダヤ人たちの陰謀を告げました。

23:22 そこで千人隊長は、「このことを私に知らせたことは、だれにも言うな」と命じて、その青年を帰した。

 千人隊長は、秘密裡に事を進める必要があることを知り、青年にもこの報告の件は誰にも言わないように命じました。

23:23 それから千人隊長は二人の百人隊長を呼び、「今夜九時、カイサリアに向けて出発できるように、歩兵二百人、騎兵七十人、槍兵二百人を用意せよ」と命じた。

23:24 また、パウロを乗せて無事に総督フェリクスのもとに送り届けるように、馬の用意もさせた。

 千人隊長は、パウロの護送のために兵士を備えました。エルサレムの町中での騒動の規模や、また陰謀の実態がつかめていないことなどから、十分と思われる兵士を用意したのです。彼は、ローマ市民を守り、目的の場所に無事送り届ける義務がありました。

23:25 そして、次のような文面の手紙を書いた。

23:26 「クラウディウス・リシア、謹んで総督フェリクス閣下にごあいさつ申し上げます。

23:27 この男がユダヤ人たちに捕らえられ、まさに殺されようとしていたときに、私は兵士たちを率いて行って彼を救い出しました。ローマ市民であることが分かったからです。

 クラウディウス・リシアは、出来事を的確に要約していますが、自分が、パウロに関して初めからローマ市民であると分かったわけではありません。自分が知らずに彼を鎖に繋ぎ鞭打ちにしようとしたことは、自分にとって不都合なことですが、それは、伏せて、自分に都合の良いように記しています。

23:28 そして、ユダヤ人たちが彼を訴えている理由を知ろうと思い、彼を彼らの最高法院に連れて行きました。

23:29 ところが、彼が訴えられているのは、ユダヤ人の律法に関する問題のためで、死刑や投獄に当たる罪はないことが分かりました。

 そして、彼が調べた範囲では、彼には死刑や投獄にあたる罪がないことを記しました。問題とされている点は、ユダヤ人の律法に関する問題であることを指摘しました。

23:30 しかし、この者に対する陰謀があるという情報を得ましたので、私はただちに彼を閣下のもとにお送りします。なお、訴えている者たちには、彼のことを閣下の前で訴えるように命じておきました。」

 そして、総督の元に送る理由を示し、パウロに対する陰謀があるという情報のためであり、そのために総督に送る旨を記しました。訴えている者たちには、総督の前で訴えるように命じたと。

23:31 そこで、兵士たちは命じられたとおりにパウロを引き取り、夜のうちにアンティパトリスまで連れて行き、

23:32 翌日、騎兵たちにパウロの護送を任せて、兵営に帰った。

23:33 騎兵たちはカイサリアに到着すると、総督に手紙を手渡して、パウロを引き合わせた。

 パウロは、カイザリアまで護送され、総督に引き合わせられました。

23:34 総督は手紙を読んでから、パウロにどの州の者かと尋ね、キリキア出身であることを知って、

23:35 「おまえを訴える者たちが来たときに、よく聞くことにしよう」と言った。そして、ヘロデの建てた官邸に彼を保護しておくように命じた。

 総督は、ヘロデが建てた官邸に保護しておくように命じました。彼が、総督や、カイザルの前に立ち、イエス様を証しするためには、ローマ市民であることは非常に大事なことでした。彼は、囚人とされて証しを担いますが、ローマ市民として保護されています。