ヨブ記35章

35:1 エリフはさらに言った。

35:2 あなたは、このことが正義によると見なしているのか。「私の義は神からだ」とでも言うのか。

 ヨブに対して、自分は、正しいのに神が苦しみを与えていると言い、その理由を知りたいと言ったことに対して、それが正義によるのかと問いました。神の前にヨブが義であるからそのことを言うのかと。

35:3 というのは、あなたがこう言っているからだ。「何があなたの役に立つのでしょうか。私が罪から離れると、どんな利益があるのでしょうか」と。

 エリフは、その矛盾点つくために、ヨブが自分が罪から離れたら神の益になるのでしょうかと言ったとすることを取り上げました。ヨブには、正しく歩む心がないと言っています。

 エリフが引用したこの言葉は、ヨブが二十一章に語った言葉と考えられます。このように言うのは、これと同じ言葉をヨブ記に見出すことができないからです。

ヨブ記

21:15 全能者とは何なのか。私たちが仕えなければならないとは。どんな益があるのか。私たちが彼に祈り願ったところで」

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 ヨブは、悪き者は、神に仕えても益がないと言い表していることを取り上げています。エリフは、この言葉を捉えて、ヨブは正しい心で神に仕える者ではないと判断したと考えられます。

 ヨブのこの言葉は、友がヨブの苦しみの原因をヨブの罪にあるとした点に関しての反論の中で語られています。悪い者が必ずしも裁きを受け、苦しむわけではないし、正しい者が苦しみを与えられることもあるということを証明するために、悪き者は、このように言うことを示したのです。ヨブに関しては、そのような言葉は、全く関係ないことも付け加えています。ですから、エリフは、ヨブの言葉を正しく理解していないのです。

35:4 私はあなたにことばを返そう。あなたとともにいる友人たちにも。

 エリフは、このヨブの言葉に対して、ヨブに反論します。また、共にいる友人たちにもと言い、友たちも同じことを言っていたことに対して、反論するのです。友たちの言葉とは、二十二章でエリファズが次のように言っています。

ヨブ記

22:2 人は神の役に立てるだろうか。賢い人でさえ、ただ自分自身の役に立つだけだ。

22:3 あなたが正しいからといって、それが全能者の喜びとなるだろうか。あなたの行いが全きものであるからといって、それが神にとって益になるだろうか。

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 エリファズは、ヨブを罪人とするため、ヨブが正しいからといって神の役に立たないと言ったのです。これは、誤りです。エリフは、それを踏まえて、友たちにも語りました。

35:5 天を仰ぎ見よ。あなたより、はるかに高い雲をよく見よ。

 天あるいは、雲は、あなたより遥かに高いことを示し、神が人とはかけ離れた存在であることをはじめに示しました。

35:6 あなたが罪を犯したとしても、あなたは神に対して何ができるのか。あなたの背きが多くあるとしても、神に対して何をなし得るのか。

 罪を犯したとしても、神に何かをなすことはできないと。神に何事か大きな影響があることはないのです。神からご覧になられて、単に人の間での出来事に過ぎないのです。人を愛し、人に親切にしたかどうか、人に悪を行わなかったかどうかの問題です。それは、神に何の影響もありません。

35:7 あなたが正しかったとしても、神に何を与えられるのか。神は、あなたの手から何を受けられるのか。

 そして、正しいとしても、神に何かを与えることができるのかと。神に与えることはできないと。神を喜ばせる霊的高さで、正しいことを行うことはできないと言っているのです。

35:8 あなたの悪は、ただあなたのような人間に、あなたの正しさは、人の子に関わるだけだ。

 ヨブが罪としていることは、人の子に関わることだけだと。その意味は、彼が正しいと主張したとしても、それは、人の間でのことで、神の高さからの善悪ではないということです。ヨブが自分は正しい、また、潔白であると主張したとしても、神の前には、正しくないということです。

35:9 人々は、激しい抑圧のために泣き叫び、偉大な者の腕のために、助けを叫び求める。

35:10 しかし、だれも問わない。「私の造り主である神はどこにおられるのか。夜、ほめ歌を下さる方は。

35:11 地の獣に教えるより、私たちに多くを教え、空の鳥より、私たちを賢くする方は」と。

35:12 そこでは、彼らが泣き叫んでも神は答えない。悪人がおごり高ぶっているからだ。

35:13 神は決して偽りの叫びを聞き入れず、全能者はこれに心を留めない。

 人が苦しみの中で泣き叫んでも、神を呼び求めることがないのです。私たちを教える方に呼び求めないのです。それで、いくら泣き叫んでも、神は答えなのです。それは、彼らの驕り高ぶりのためです。神の前に謙り、求めないからです。また、彼らの叫びは、真実に神を求めるものではないからです。

35:14 「神を見られない」とあなたが言うときには、なおさらだ。しかし訴えは神の前にある。あなたは神を待て。

 「神を見られない」と言ったというこの言葉は、二十三章の言葉です。そこでは、自分の潔白さを主張し、神の前に出たいと言っています。そのように言う者に対しては、神はなおさら答えられないと言っています。

 しかし、あなたの訴えは、神の前にあるので、神を待つようにも勧めています。

ヨブ記

23:1 ヨブは答えた。

23:2 今日もまた、私の嘆きは激しく、自分のうめきのゆえに私の手は重い。

23:3 ああ、できるなら、どこで神に会えるかを知って、その御座にまで行きたいものだ。

23:4 私は神の御前に自分の言い分を並べて、ことばを尽くして訴えたい。

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35:15 しかし今、神は怒って罰しないだろうか。ひどい罪を知らずにいるだろうか。

 しかし、今は、神は、ヨブのひどい罪をご存じであり、怒って罰しないだろうかと。

35:16 ヨブは空しい口を開き、知識もなしに、自分の言い分を並べ立てている。

 ヨブが神の懲らしめを受け入れず、口を開いて、自分の潔白さを主張していることを咎めました。知識もなしに自分の言い分を並べ立てていると。

ヨブ記

21:7 なぜ悪しき者が生きながらえて年をとっても、なお力を増し加えるのか。

21:8 その子孫は彼らとともにあって、彼らの前に堅く立ち、その末裔は彼らの目の前に堅く立つ。

21:9 彼らの家は平和で恐れもなく、神のむちが彼らの上に下されることもない。

21:10 その雄牛は、はらませて失敗することがなく、その雌牛は、子を産んで仕損じることがない。

21:11 彼らは幼子たちを羊の群れのように自由にさせ、彼らの子どもたちは飛び跳ねる。

21:12 彼らはタンバリンや竪琴に合わせて歌い、笛の音で楽しむ。

21:13 幸せのうちに寿命を全うし、安らかによみに下る。

21:14 彼らは神に向かって言う。「私たちから離れよ。私たちは、あなたの道を知りたくない。

21:15 全能者とは何なのか。私たちが仕えなければならないとは。どんな益があるのか。私たちが彼に祈り願ったところで」と。

21:16 見よ、彼らの繁栄はその手の中にはない。悪者のはかりごとは、私とは何の関係もない。

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ヨブ記

22:1 テマン人エリファズが答えた。

22:2 人は神の役に立てるだろうか。賢い人でさえ、ただ自分自身の役に立つだけだ。

22:3 あなたが正しいからといって、それが全能者の喜びとなるだろうか。あなたの行いが全きものであるからといって、それが神にとって益になるだろうか。

22:4 あなたが神を恐れているためか。神があなたを責められるのは。神があなたとともにさばきの座に入って行かれるのは。

22:5 いや、それはあなたの悪が大きく、あなたの不義に際限がないからではないか。

22:6 あなたは理由もなく兄弟から質物を取り、着ている物をはぎ取って裸にし、

22:7 疲れている人に水を飲ませず、飢えている人に食物を拒んだからだ。

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ヨブ記

23:3 ああ、できるなら、どこで神に会えるかを知って、その御座にまで行きたいものだ。

23:4 私は神の御前に自分の言い分を並べて、ことばを尽くして訴えたい。

23:5 神が私に答えることばを知り、神が私に言われることをわきまえ知りたい。

23:6 神は強い力で私と争われるだろうか。いや、むしろ私に心を留めてくださるだろう。

23:7 そこでは正直な人が神と論じ合うことができ、私は、とこしえにさばきを免れるだろう。

23:8 だが見よ。私が前へ進んでも、神はおられず、うしろに行っても、神を認めることができない。

23:9 左に向かって行っても、神を見ることはなく、右に向きを変えても、会うことができない。

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