ヨブ記27章

27:1 ヨブはさらに言い分を続けた。

27:2 私は、私の権利を取り去った神にかけて誓う。私のたましいを苦しめた全能者にかけて。

27:3 私の息が私のうちにあり、神の霊が私の鼻にあるかぎり、

27:4 私の唇は決して不正を言わず、私の舌は決して欺くことを語らない。

 ヨブは、全能者にかけて、欺きを語らないと誓いました。これから語ることに何の欺きもないということを始めに語りました。友たちは、ヨブの言葉を何も信用していません。聞き入れないのです。ヨブの言葉を正しい言葉として受け止めていれば、彼らは、いつまでもヨブの罪を責め続けることはないのです。

 ヨブは、神に関して、彼の権利を取り去った神と言いました。これは、後半の言葉から、ヨブのたましいを苦しめたことを指しています。ヨブに権利があるとすれば、それは、契約に基づくことです。主の前に正しく歩むならば、祝福するというのが契約です。ヨブは、潔白な者として歩んでいるのですから、その祝福を受ける権利があるのです。しかし、神の主権と摂理すなわち計画は、それを上回るもので、たといヨブが正しい者であっても苦しみを与える権利を持っています。それで、全能者と言い表しています。それをする権利を持ち、力を持つ方であるからです。ヨブは、不平を言っているのではなく、自分の苦しみの原因が友たちが考えるように、彼自身の罪によるのではないことを明確にするためです。

 彼が偽りを言わない理由のもう一つは、彼のうちには、「息」と表現されている霊がありました。そして、彼の鼻には、神の霊がありました。人の霊と神の霊が同時に取り上げられていますので、ヨブは、神の霊を受けていたことが分かります。

27:5 あなたがたを正しいとすることなど、私には絶対にできない。私は息絶えるまで、自分の誠実さをこの身から離さない。

 ヨブは、友たちを正しいとすることは決してできないと言いました。彼らは、正しいことを語っていなかったからです。ヨブに罪があると一貫して責め続けたことです。彼らを正しいとすることは、自分の誠実さを失うことです。

・「誠実さ」→誠実さ。高潔さ。傷がない。これは、人間的な誠実さではなく、神の言葉に対しての誠実さで、それから逸れないことです。

27:6 私は自分の義を堅く保って手放さない。私の良心は生涯私を責めはしない。

 彼は、不正をそのまま受け入れることで、義を失うことをしないのです。それを堅く保つのです。また、彼は、生ける限り正しく歩むので、彼の心は、生涯彼を責めないのです。

・「良心」→心。

27:7 私の敵は悪しき者のようになれ。向かい立つ者たちは不正を働く者のようになれ。

 ヨブは、友について「敵」と言い表しています。彼らは、ヨブに向かい立つ者です。ヨブの正しさを認めず、彼を罪人とみなして、責めるのですから。彼らの動機は、ヨブに対しての愛ですが、正しく判断することができず、結果的にヨブに敵対していました。

27:8 神を敬わない者に、どのような望みがあるのか。神が彼を断ち切り、いのちを取り去るときには。

 友たちは、そのようにすることで神を敬わない者となっていました。その彼らが神から命を取られる時、どのような望みがあるのかと。彼は、不正な者としての評価を受けることになります。

27:9 苦しみが彼に降りかかるとき、神は彼の叫びを聞かれるであろうか。

 また、神が彼に苦しみを与えた時、神は、彼の叫びを聞かれるだろうかと。

27:10 彼は全能者を自分の喜びとするだろうか。どんなときにも神を呼び求めるだろうか。

 彼は、そのように不正の中にあり、神が正しい者として受け入れないならば、彼は、神を喜びとすることができるでしょうか。神と一つになって歩むということができるでしょうか。彼は、神が受け入れられないのに、どんな時にも神を呼び求めるだろうかといい、それをしないことを言っています。

27:11 私は、神の御手にあることをあなたがたに教え、全能者のもとにあるものを隠さない。

 彼は、悪者がどのような仕打ちに遭うのかを教えようとしました。全能者の元にあるもの、ここでは、悪者に対する裁きと、二十八章からは、神にかなう「知恵」について教えます。以降にそのことは語られます。

27:12 あなたがたは、全員がそれを見たのに、なぜ、全く空しいことを言うのか。

 友たちは、それを見たと言いました。悪者が受ける裁きについては、彼らも語ったのです。しかし、彼らは、正しいことを語らないことで、自分が悪者になっていました。悪者がどのように扱われるのかを知っていながら、彼らは、唇の戸を守らず、空しいことを言いました。

27:13 悪しき人間が神から受ける分、横暴な者が全能者から受け継ぐものは次のとおりだ。

 以降には、悪しき人間が神から受ける分について語ります。ここでは、神と人間が対比されています。人間という言葉は、塵を意味するアダムですが、神の高さと人の虚しさが対比されています。

 後半は、横暴な者と全能者が対比されています。横暴な者は、人の間で力ある者です。しかし、神の前には、無力であることが強調されています。

・「神」→神。単数。力。

27:14 たとえ子どもが増えても、剣にかかり、子孫が食べ物に満ち足りることはない。

 子供が増えたとしても、剣にかかって死にます。子孫は、食べ物に満ち足りることはありません。

27:15 その生き残りも死んで葬られ、やもめたちは泣きもしない。

 その生き残りも死に、葬られます。やもめたちが泣きもしないことは、彼らが惜しまれることも愛されることもなかったことを表しています。

27:16 彼が金をちりのように積み上げ、衣装を土のように蓄えても、

27:17 蓄えたものは、正しい者がこれを着て、金は、潔白な者が分ける。

 彼が多くの金を持ち、多くの衣装を持っても、正しい人のものになります。

27:18 彼はシミの巣のような家を建てる。番人が作る仮小屋のような家を。

 彼の建てる家は、シミのような家と表現される見窄らしいもので、番人の仮小屋のようです。

27:19 富む者として床につくが、もうそれきりだ。目を開けると、もう何もない。

 彼は、富む者とし床についても、目を開ける時には何もないのです。一晩で失われます。

27:20 突然の恐怖が洪水のように襲い、夜にはつむじ風が彼を運び去る。

 突然の恐怖の出来事が洪水のように彼を襲います。夜には、旋風に運び去られます。これも、突然のことです。

27:21 東風が彼を運ぶと、彼はいなくなり、その居場所から彼を吹き払う。

 東風に吹き払われて、突然いなくなります。

27:22 それは容赦なく襲いかかり、彼はその手から必死に逃れようとする。

27:23 それは彼に向かって手をたたき、彼を嘲って、その居場所から追い出す。

 彼は、必死に逃れようとしますが、容赦なくそれは襲いかかり、彼は、その場から追い出されます。

・「それ」→三人称、男性、単数。直前の東風を受けている。