詩篇21篇
指揮者のために。ダビデの賛歌。
この詩は、二十篇と内容的によく似ています。いずれも、王の救いについて歌われています。
21:1 主よあなたの御力を王は喜びます。あなたの御救いをどんなに楽しむことでしょう。
王が主の御力を喜び、その御救いを楽しむことが歌われています。王は、それを非常に喜びとします。御力のうちに喜ぶことは、主の御力を知り、主を喜ぶことです。救いのうちに喜ぶことは、救いという祝福を覚えて喜ぶことです。
この救いは、直接的には、ダビデの敵からの救いですが、主イエス様に関する比喩になっています。
「救い」の原語の意味は、「救われた何か、すなわち(抽象的に)開放」ということです。イエス様に関して、人としての歩みの目的は、父の御心を行うことです。それを妨げるのは、イエス様のうちにある肉です。人としての性質を持たれたことは、肉を持ったということです。イエス様は、肉から開放されて、御霊によって父の御心を完全に行われました。ですから、その開放の力は、御霊の働きと言えます。肉を殺し、御霊に明け渡すことが必要ですが、イエス様に関して、それは、完全でした。肉を持ちながらそれができたことがイエス様の偉大さです。
イエス様に関して、救いはイエス様が父の御心を完全に成し遂げられて、父の御許で栄光を受けることを表しています。これは、信者が父の御心を行い、御国で報いを受けることと同様です。それは救いと表現されています。
・「御力を喜ぶ」→御力のうちに喜ぶ。この喜びは、主を喜ぶような霊的な喜び。
・「救いを楽しむ」→救いのうちに喜び楽しむ。この喜びは祝福を喜ぶような喜び。
21:2 あなたは彼の心の望みをかなえ唇の願いを退けられません。セラ
主は、イエス様の心の望みを叶えられます。イエス様の心にあることは、父の御心の実現です。そして、その願いを退けられません。それは、願うことの全てが御心に適ったことであるからです。
21:3 あなたは幸いに至る祝福をもって彼を迎え頭に純金の冠を置かれます。
「幸いに至る祝福をもって」は、原語からは、「主の目にかなっている祝福をもって」の意味です。主の目にかなっているという主の喜びがあり、その結果与えられる誉れあるいは栄光があるのです。それが祝福です。
その栄光の具体的なものについて、頭に純金の冠を置かれることです。純金は、「神聖」を表していて、神としての栄光を受けることを表しています。ダビデは、神としての栄光を受けることはありませんから、これは、イエス様に関する比喩です。主イエス様は、神の御心に従い十字架の死にまでも従われたので、父の右の座に引き上げられました。その誉れは、イエス様が人として歩まれ、自分を捨て、神の御心だけを行い、かつ完全に成し遂げられたからです。
21:4 いのちを彼はあなたに願いあなたは彼にそれをお与えになります。いつまでもとこしえまでも限りなく。
この方は、いのちを願いました。そのいのちは、地上にあっては、父の御心を行い、父と一つであることです。そして、父の身許にあっては、永遠の栄光を受けることです。主イエス様は、そのいのちを地上で経験されたし、父が最高の栄誉を受けるにふさわしいとして、右の座に引き上げられたことで報いを受けました。それがいのちです。信者も同様に、御国で栄光を受けることがいのちと表現されています。
21:5 御救いによって彼の栄光は大いなるものとなり威厳と威光をあなたは彼の上に置かれます。
御救いは、肉からの開放であり、完全に神の御心を行うことです。それによって、主は、主イエス様に大いなる栄光を与えられました。父の右の座に着く方として、威厳と威光を与えられました。
21:6 あなたはとこしえに彼に祝福を与え御前で喜び楽しませてくださいます。
主は、主イエス様に、永久に祝福を与えられます。それが父の望まれたことでした。そして、主イエス様御自身は、父の御心の実現をご覧になられて、喜び楽しまれます。その喜びの中には、贖われた者たちの存在もあります。
21:7 王は主に信頼しているのでいと高き方の恵みにあって揺るぎません。
王は、主に信頼していました。主は、「恵み」すなわち「契約に対する忠誠」によって揺るぐことがありません。イエス様が信頼しているので、その信頼に応えて初めから御子について約束されていることを忠誠をもって実現されるのです。
21:8 あなたの御手はすべての敵を見つけ出しあなたの右の手はあなたを憎む者を見つけ出します。
21:9 あなたの現れのときあなたは彼らを燃える炉のようにされます。主は御怒りによって彼らを呑み尽くし火は彼らを食い尽くします。
そして、イエス様は、敵を見出し、その御力で、彼らを焼き尽くされます。それは、この方が現れる時です。患難時代の終わりの時期です。主御自身の御怒りによって彼らを焼き尽くされます。
21:10 地の上から彼らの裔を人の子らの中から彼らの子孫をあなたは滅ぼしてしまわれます。
そして、イエス様に敵対した者たちは、地上から滅ぼされ、その子孫さえ残りません。
21:11 彼らがあなたに対して悪を企て計略をめぐらしても成し遂げられません。
彼らは、イエス様に対して悪を企て、計略をめぐらしたのです。しかし、それは、成し遂げられないのです。
21:12 あなたは彼らが背を見せるようにし弓弦を引き彼らの顔を狙われます。
彼らは、悪を企て計略をめぐらしましたが、無力であり、却って彼らは背を見せ、弓で顔を狙われます。
21:13 主よあなたの御力のゆえにあなたがあがめられますように。大いなる御力を私たちは歌いほめ歌います。
この詩は、主の御力に対する賛美で終わっています。王に救いを与えることを通して現された神様の力の偉大さが表されているのです。
※他の詩との位置づけ
・19篇 御言葉の尊さ
・20篇 人としてのイエス様の歩み
・21篇 王としてのイエス様
・22篇 十字架を中心に
・23篇 牧者としてのイエス様
・24篇 永遠の支配者